約 745,901 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4640.html
前ページ次ページルイズの魔龍伝 1.ゼロに喚ばれし「ゼロ」 少女は夢を見ていた 今まで見たことの無い夢 稲光が走る雷雲の中、巨大な黒い龍が飛んでゆく そして、その龍の背に乗っている少女 「(私は…どこへ行くのだろう)」 少女の想いを乗せて、黒い龍は雷雲の中を飛んで行った…… “彼”は目の前の状況を理解しようとしても到底出来るものではなかった。 「(人間…の少女?何だ?周りの奴も似たような格好…制服…?学校か何か?)」 旅の途中、目の前に突如現われた鏡のような物体。 異様な雰囲気に敵の罠かと思い剣をとっさに抜き斬りかかったら、 突如光が視界を覆い尽くし気づくとこの風景である。 抜けるような青空、そよぐ平原、後ろにそびえる大きく荘厳な建造物。 そして目の前にいるブラウスでスカート姿、マントに小さな杖を持った桃色の髪の少女。 その後ろにいる桃髪の少女と同じような格好の大勢の少年少女。 「ルイズの奴、変なゴーレムを召喚しちまったぞ!」 「でもなんか小さいな…こんなチビゴーレム見た事無いぜ」 「出来損ないが召喚するからこうなるんだよ、ルイズの奴にはお似合いのチビだな!」 後ろにいる少年少女の笑い声が聞こえる。 一体何がどうなっているやら、この状況を知るために彼は近くの少女に話しかけた。 「そこの少女、ここは一体どこだ?」 「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しを要求します!もう一回だけ!」 「それは出来ない相談だミス・ヴァリエール。いいかい?このサモン・サーヴァントは 全ての生徒が二年生に進級する際に行う儀式であり使い魔を召喚する事なんだ。」 召喚、と少女と話していた禿頭の男性が言っていたのを彼ははっきりと聞いた。 「…おい」 「ですが!」 「くどいぞミス・ヴァリエール、ゴーレムでも呼び出したものは使い魔。 君と一生を共にするのだ、やり直しも当然利かない事は勤勉な貴女が良く知っているはずでしょう。」 「おい!」 「同級生にあそこまで言われてるんですよ!私は出来損ないのままではいたくないんです!」 「伝統は伝統、曲げる事は出来ない。さぁサモン・コントラクトを行いなさい。」 「えぇー!?」 「人の話を聞け!!」 彼が一喝するとミス・ヴァリエール、もしくはルイズと呼ばれた少女に ミスタ・コルベールと呼ばれた禿頭の男性、それと後ろで騒ぎ立てていた少年少女。 全てが急に雷に打たれた様に黙ってしまった。 「人を召喚!?ふざけるのも大概にしろ!俺は魔物や幻獣じゃない!ましてやゴーレムでもな! それを何だ!勝手に呼び出してこちらの都合のお構いもなしに話を進めて! まず呼び出したらそっちの名前を名乗って状況の説明ぐらいしてみろ!」 「え、あ…」 少女は正直混乱していた。呼び出した変なゴーレムが急に、しかも大声で喋ったのだ。 数回の失敗を重ねてやっと召喚したその使い魔がこれである。 昨夜の晩、黒い龍に乗った夢を見たのでれっきとした根拠とは言いがたいがかなりの自信もあった。 万感の想いを込めて召喚したその使い魔が、これなのである。 いきなり状況を説明しろだの俺はゴーレムではないだの、一体何がなにやら。 が、気圧されてるままというのは彼女のプライドが許さない。 「そそっ、そうね!使い魔に基礎的な知識を教えるのも主人の勤めよね!」 「(使い魔って何だ、俺は誰かに使役されるとでもいうのか!)」 彼はそう言おうと思ったがとりあえず状況を聞くだけ聞いてみる事に決めて黙り込んだ。 「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、名門公爵家である ヴァリエール家の三女よ、以後あんたのご主人様として私に従ってもらうからね。 そしてここはかの有名なトリステイン魔法学院、メイジを数多く輩出している名門中の名門ね!」 「おい、今“ご主人様として私に従ってもらう”と言ったな?」 「そうよ、召喚したあんたは私と契約して使い魔になるの、お分かりゴーレムさん」 「ふ…」 「ふ?」 「ふざけるなッ!!」 「ひゃぁっ!!」 桃髪の少女、ルイズの前で腕組みをした彼は一喝した。 「貴族だか何だか知らんが俺はそんなものに従う義理もなければ理由も無い、さらばだ」 ぽかんとする一堂を置いて彼は彼女達を背に歩き出す。 「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」 「旅の続きをする、ラクロア王国のある方角はどこだ?」 「ラクロアぁ?そんな国小国でも聞いた事無いわよ、アンタどっから来たのよ?」 「俺の方こそ聞くがトリスティンとはどこの地方の国だ? 俺も長い間旅をしているがこの国名は初めて聞いた」 「ハァ?喋るゴーレムだから知識があるかと思ったら全然当てにならないじゃないのよ」 今のやりとりで彼は心の中でとても引っかかりを感じた。 「(待て、いくらなんでもラクロアを知らないのはおかしいぞ! ナイトガンダムに纏わる数々の伝説の発祥地、ラクロア騎士団といえば かのアムロ騎士団長をはじめ人間、ユニオン族様々な腕利きの騎士を輩出した かなりの知名度を誇る王国!人間族でもユニオン族でも知らぬはずが無い!)」 彼の中で思考が加速する、彼女が挙げる全く知らない国、自分の挙げる国を全く知らないという彼女。 自分の中の、あまりこうだと決定したくない答えを確かめるため彼は彼女に聞いた。 「…ここはスダ・ドアカ・ワールドではないのか?」 「何それ?知らないわよ」 決定的である。この返答から導き出される答えは一つであった。 「俺は……異世界に来てしまったというのか!」 「ミス・ヴァリエール、早くコントラクト・サーバントを。 今日の召喚は貴女が最後ですので早く終わらせなさい。」 「はーい…仕方が無いけどゴーレムならまぁ、抵抗無く出来るかしら? 我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え我が使い魔となせ」 これからどうしようか考え事をしている後ろでなにやらルイズとコルベールが喋っている。 使い魔と聞こえたのでまだ自分を使役しようと算段しているのであろう、と彼は考えていた。 「だから俺は使い魔なんかやらな…」 「いい事?ゴーレムとはいえこんな名誉な事、あるもんじゃないんだからね」 彼が断りながら振り向くと何故か顔が赤いルイズが彼の口?のような赤い出っ張りに そっ、と口をつけた。 「なっ、何を……すっ、ぐああああああああっ!!」 今まで感じたことの無い痛みを右腕に感じた彼は思わず呻きを上げてしまう。 「はい、おしまい。全くゴーレムの癖に痛みまで感じるなんて何なのかしら?」 「ぐっ…はぁ、はぁ…」 「珍しいルーンだね、後でスケッチさせてもらうよ」 近寄ってきたコルベールがそう言うと彼の右手を持ち上げてまじまじと見つめる。 確かに彼の右手には何か紋様のようなものが刻まれていた。 「契約完了ね、ゴーレムさん」 「だからゴーレムじゃない!俺はゼロ、ユニオン族のゼロガンダムだ!!」 かくして異世界からの来客、ゼロガンダムは 半ば強引に少女・ルイズの使い魔にさせられたのであった。 ――――――――そのはるか上空、浮遊大陸さえ手に取るようなぐらいの高度で“それ”はいた。 「頼んだぞ…正義の雷、聖龍の騎士よ…いずれ時満ちれば、再び舞い戻ろう……」 悠然とどこかへ飛んでゆくそれは、黄金の龍であった。 前ページ次ページルイズの魔龍伝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2228.html
前ページ次ページルイズ・キングダム!! その日その時、彼女は初めて魔法を成功させた。 「ゼロのルイズが召喚を成功させたぞ!」 「こりゃあ、明日は嵐かもな」 まわりのクラスメイトからの野次も今は気にならない。気にする余裕も無かった。 「えっと……なにコレ? 亜人?」 今日はトリステイン魔法学院、春の使い魔召喚儀式。 ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは自分が召喚した相手を前に呆然としていた。 彼女が召喚し、目をグルグルさせて倒れているのは、女の子のような生き物。 女の子、と断言しないのは、その子の肌が子犬のような茶色い短毛で覆われているからだ。 耳も垂れた感じのイヌミミ。少しだけ覗いた口にも、犬のような鋭い牙が生えている。 じゃあどの辺りが女の子っぽいかと言うと、それ以外の全部。 小柄な身体は人間と同じような四肢が揃っているし、きちんと衣服を纏っている。 粗末な厚手の布のワンピース。丈夫そうな革のブーツと手袋。 身体に合わない大きなベルトに、こちらは身体に合わせたような小さな剣。 くすんだ赤のマントは口元を隠す襟巻きのように覆い、体毛とは色の違う真っ白な髪の毛が背中程に伸ばされている。 そして、トサカのような逆立った前髪の後ろに隠されるように、小さな王冠を被っていた。 可愛らしいと言っても良い顔立ちはトロール鬼やオーク鬼とはまるで違うけれど、全体的な雰囲気は亜人のそれに近い。 その上王冠とくれば、未知の亜人の王族でも召喚してしまったんだろうかと不安にもなる。 「なぁ、アレってまさかエルフなんじゃあ……」 「まさかぁ。ゼロのルイズがエルフなんて凄い使い魔を呼び出すはず無いって」 ヒソヒソと話し合うクラスメイト達。 タレミミが長いと言えば長い耳だから、確かにウワサに聞くエルフかもしれない。 でもエルフがこんな毛皮に覆われた生き物だなんてハナシは聞かないし…… でもまぁ、召喚成功は成功という事で、ルイズはあまり深く考えず契約の呪文を唱えてその子とキスをした。 豚のような顔のオーク鬼とかじゃなくて本当に良かったと思いながら。 <ルイズ・キングダム!!> キスをした途端、私の使い魔になったばかりの亜人っぽい女の子が跳ね起きる。 パッチリと開いた瞳はルビーのように綺麗な真紅。 おそらく普段なら凛々しいであろう太めの白い眉が、呆然と見開かれた目を縁取っている。 「な、なんだここは!? 天井が青いぞ! 壁が見えないぞ!」 「ちょ、ちょっとアンタ落ち着きなさいよ!」 「星も無いのに明るいのはなんでだ!? ってゆーかここはドコだ!?」 周囲を見回して、突然騒ぎ出す女の子。 コンストラクト・サーヴァントの効果か言葉はルイズ達と同じ言語だが、 周囲の人間の姿なんか目に入ってないようで、ルイズの言葉なんかまるで聞いていない。 「ダッパー! ダッパは居ないのー!?」 心細そうな、切ない声で誰かを呼ぶのを聞いて、ふと罪悪感がこみ上げてきた。 柔らかそうなニコ毛を生やした見た感じはまだ子供っぽいし、自分にとってサモン・サーヴァントを行うのが必要だったとは言え、 亜人少女の家族や友達から引き離してしまったと思うと、ルイズもなんだか可哀そうな気がしたのだ。 「あの、ゴメンね……貴女のダッパって人は、ここには……」 ――よびました?―― 驚きで一瞬ビクッと硬直してしまうルイズ。 いつの間にそこに居たのか、彼女の背後から変な生き物が声をかけてきたからだ。 小柄なルイズの腰ほどの身長しかない、茶色の動物。 生意気にも二足歩行をしていて、服は着ていないのにベルトと口元を隠す赤い襟巻きだけを身につけている。 その手にはけっこう立派な槍をぶら下げ、アタマにはバッテン印の巨大バンソーコー。 「なななな、なによアンタ」 ――あ、はじめまして。『忠実な僕』ダッパといいます―― 「ちちち忠実な僕?」 ――はい。『小鬼小王』クロビスさまの従者です―― 「クロビス様って誰よ……って、あの子の事ね?」 ――そですね―― 「ダッパぁ! 居たんだダッパー! よかったよー」 ガシッと変な生き物ことダッパに抱きつく亜人の子・クロビス。 良く見ると二匹は似ていない事も無いと思える外見だ。 犬っぽいタレミミとか茶色い短毛とか赤い襟巻きとか。 大きさは倍半ぐらい違ってて、クロビスが上級機でダッパが量産型って感じだけど。 まぁ、なんだか判らないけど大事な人と離れ離れにならなくて良かった、とかルイズが思っていると。 「馴れ馴れしいー!!」 ――むぎゅ―― 自分から抱きついたはずのクロビスが、いきなり怒鳴ってズビシとダッパを突き飛ばしていた。 コロリンと転がりながら受身を取るダッパ君。妙に慣れた様子だった。 「ミス・ヴァリエール? これはいったい何の騒ぎなのかね?」 「私の方が聞きたいです、ミスタ・コルベール。 だいたい一体の動物しか召喚されないはずのサモン・サーヴァントを唱えて、 なんで亜人が二匹も現われるんでしょうか?」 ――まぁ、なんとなくそこにいるのが小鬼なんで―― 「小鬼?」 ――くわしくはこちらのヒトにきいてください―― 「こちらって……うわっ!?」 これまたいつの間にか居たのはえっと、小鬼のお婆さん? やけにヨボヨボしてて背中の曲ったローブ姿の小鬼が、4匹の小鬼が支える輿ってゆーか板にゴザをひいたようなモノに乗っていた。 「いや、だからアンタ達ホント何処から現れてるのよ」 「ワシは『話の長い』バゼバゼじゃ。おじょうちゃんに、ちぃ~と小鬼に関して解説してやろうかのぉ」 「なんだか不吉な予感がする二つ名なんだけど……」 ルイズの予感は当たりだった。本当にトコトン話が長い。 そりゃもう、コルベール先生を残してクラスメイトは学院に帰ってしまうし、終わる頃にはとっぷり日も暮れるぐらいに。 その世界は住人達からは百万迷宮と呼ばれている。 空も大地もなく、あるのは床と壁と天井のみという迷宮世界。 上に登れば「天使」という超越種族が住む「天階」に、 下に降れば「深人」という超越種族が住む「深階」にたどり着くと言うが、 そこに行って戻ってきた者などお伽噺でしか知られない、 東西南北上下のどちらに行ってもひたすら迷宮が広がっているヘンテコな世界なのだと言う。 小鬼達は迷宮の中では最もありふれた種なのだという。 それこそ人間とタメを張るぐらいに何処にでも住んでいる。 迷宮世界での食物連鎖ヒエラルキーで最下位を競う両種族はしかし、高い繁殖力と適応性でもって生き延びる事を選んだ。 特に小鬼は、普通に子供をつくるだけでなく、なんとなく生えてきたり、なんとなく増えたりすると言うのだ。 かなりムチャクチャな種族と言えるだろう。 ともかく、そんな小鬼や人間は、弱いからこそ徒党を組む。 徒党を組めば中から少し力の強かったり頭が良かったりする者が現れるのは必然と言えよう。 そう言った者達は国土開拓者「ランドメーカー」と呼ばれて「国王」や「大臣」を名乗り、「宮廷」を形成。 「宮廷」に率いられた人々が小は数十人から大は数万人の「王国」がひしめいて群雄割拠の様相を呈する。 それが百万迷宮という世界なのだと言う。 そしてルイズが召喚した「小鬼小王」クロビスこそ、「神官」のバゼバゼや「従者」のダッパを率いる「小鬼王国」に君臨する国王なのである。 ちなみに国民は小鬼46匹 「いやまぁ良いけど。ウチの学校の学年一つ分より少ない国民で国家を名乗るってどうなのよ?」 「国民100人以下の小国は、卓上に納まるような王国、テーブルランドなどと呼ばれるのじゃ。 そして迷宮国家全体の約八割はテーブルランドであるとも言われておるじゃ」 「ショボっ」 ――あと「学園」をなのるこっかもあるそうですよ、いくつも―― 規模としてはそっちが正しそうな気がするルイズだったが、迷宮の中の学校と言うのも想像し難かった。 正直異世界とか迷宮だらけの世界など荒唐無稽で信じ難いけれど、話のディテールがしっかりとし過ぎているし、 こんな生き物についての知識はルイズやコルベールにも無い。 ハルケギニアの既知生物では無い事は確かだろう。 クロビス達が月を見上げて「なんか丸いのが二つ浮いてるぞー」とか言ってガビーンとなってるのも演技には見えなかったし。 ――きいたことありますよ。よるにひかるまるい星は『月』っていうんです―― 「ああ、その伝説なら知ってるぞ。アレってチーズで出来てるんだよな?」 ――おなかいっぱいたべられますね―― 「なんでチーズなのよ。 まぁ百歩譲って彼等がその百万迷宮から来た異世界の亜人だとしても良いわ。 私の呪文が妙な世界とこの世界を繋いでしまったとしても、特別に許すわよ。 で、何でサモン・サーヴァントでその小鬼が三匹も呼び寄せられてるのよ?」 ――たぶん迷宮嵐のせいですね―― 「迷宮嵐?」 迷宮嵐と言うのは、空間構造の不安定な百万迷宮では時折起こる自然現象だ。 部屋の配置やその中身の位置、果ては住人までもをランダムに飛ばしてしまう迷惑な迷宮災害。 たまに異世界からの稀人が現われたり、その逆に他所の世界に飛ばされる者も居る。 近年では大規模な迷宮嵐で異世界との大きな通路が繋がったようで「チキュウ」とかいう世界と頻繁に行き来している小鬼も多いという。 ――ちょうどソレに遭ってたトコロだったんです―― 「大変だったんだぞー」 「いやまぁ、トンデモない世界だって事だけはよーっく判ったわ……」 「大変過ぎて王国が滅んだぐらいだからな」 「はい?」 ――あ、ほろんじゃいましたか―― 「え? 良いのアンタ達、そんな軽く言ってて?」 ――毎度のことですから―― 「うん。クヨクヨしてても始まらない。ほろんでも再建すればいいんだからな!」 まるでメゲたところも見せず、クロビスが元気一杯でそう言った。 「いや、再建とかじゃなくて、アンタは私の使い魔なんだけど……」 「オババ、ここに宮廷を呼んでちょうだい!」 「やれやれ、めんどうだねぇ。アンタ替わりに頼むよ」 口を挟む間もなく、勝手に話を進めるクロビスとバゼバゼ。 「ねえ……ひょっとして、ダッパ君が一番人の話聞いてくれる人なのかしら?」 ――まわりをみないタイプのヒトがおおいですからねぇ―― 「人じゃなくて小鬼でしょうアンタ達……なんか早くもメゲそうよ私」 言ってる間にもオババことバゼバゼに命令されて、小さな鍵のような杖を持った小鬼が、なにか呪文を唱え出した。 まさかメイジでも無いのに魔法が使えるんだろうか? いやでもオババは神官とか言ってたし。でも亜人なのに先住魔法じゃ無くて呪文を唱えて? ルイズがそう思って見ていると、小鬼は何も無い空間にその鍵を突き刺し、思いっきり捻った。 空間が開く。 そうとしか表現のしようが無い現象がおこって、次の瞬間原っぱに粗末な小屋が現われていた。 「ショボっ! 魔法自体は凄いけど『宮廷』ショボいわよ!」 どれぐらいショボいかと言うと、学院の馬小屋の方がまだマシじゃないかというぐらい。 テキトーに石材とゆーか石ころを積んで、テキトーに動物の骨や牙で骨組みを作って、 テキトーに布で囲った大き目の簡易テントのような「宮廷」である。 なんだかゲンナリするルイズ。 「おおっ、コレは凄い。こんな骨は見たことがありませんぞ!」 対照的にコルベール先生は凄く嬉しそうだった。 どうやら学術的好奇心が刺激されたらしい。 「おお、これは何かの道具ですかな? むむむ、こっちもなにやら不思議な物が……」 「それより今の魔法ってなんなのよ? アンタ達メイジなの?」 ――それはまた、ふるくさいよびなですね―― 「ずーっとずーっと昔には、魔法を使うのはみんなメイジって呼んでた時代もあったものさ。 今は三大魔道って言われる主要な三つに分けられててねぇ。 つまり星術、召喚術、科学の三部門があって、その全部を操るのが魔導師ウォーロック、 星術を扱うのは星術師、召喚術は召喚師、科学を使うのは博士って呼ばれるのさ。 いましがた使って見せたのは召喚術の一種じゃね。 国の施設を一個移動させられる『お引越し』って術なんじゃよ、お嬢ちゃん」 「国に温泉があれば迷宮探索の途中でも温泉に入れるし、 国に転職所があれば探索中でも転職できるんだぞ! って言っても、まぁウチの国にそんな『施設』は無いけどな」 「魔法が使える使い魔……って、ワタシの使い魔はクロビスだけど、 国王の部下の部下なら私の使い魔も同然よね?」 これはダンゼン当たりを引いたかと喜ぶルイズ。 そんなルイズをまるっきり無視した様子でクロビスは元気一杯に気勢を上げる。 「よーし、ここに新小鬼王国の建国を宣言するぞ! 景気付けに王国の名前を一新するので、宮廷は各自ダイスを持て!」 「え、私も?」 なにがなんだか分からない内にサイコロを持たされて振る事になるルイズ。 「ええっと、出目は3と4ね」 クロビスとダッパもサイコロを振っている。 これで何が決まるのかとルイズとコルベール先生が思っていたら…… 「新王国の国名は「帝政連合帝国」に決定だぞ!」 「いやいやいやいやいやいや、待ちなさいよ! 帝政と帝国が被ってるって言うか、連合で帝国ってどうなのよって言うか、サイコロ振って決めるのかよとか、ツッコミ所が多すぎ! むしろツッコミ所しか無いじゃないのこの国名!」 「気に入らないのか? じゃあオババとモークで振りなおして」 「うわっ!? いつのまにかもう一匹小鬼が増えてる!?」 そこにはいつの間にか黒装束に身を包んで生気の無い目をした、なんだか存在感が薄い小鬼が座ってた。 どうやらモークと言うらしい小鬼とオババが、先程のルイズと同じようにサイコロを振る。 「新王国の国名は「古代連合同盟」に決定したぞー!!」 「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや! 連合で同盟ってまた被ってるわよって言うか、今出来たばっかりなのに古代ってナニよって言うか、 そもそもサイコロ振って決めんなとか、ツッコミ所が全然減ってないってば!」 「しかしこの国名決定は『世界の法(ルールブック)』に則ったもの。 これ以上の変更は出来んのだ。あきらめろ神官」 「そんな、あきらめろって言われても。 そもそもルールブックって何よ、そんなワケ判らない物なんかに……って、神官?」 「そなたの事だぞ『ゼロの』ルイズ。 これより我々の宮廷(コート)は一心同体の運命共同体となった! 『古代連合同盟』をいずれこの『外』世界に覇を唱える大国にするため、 国民共々精進努力を重ねてゆくのだ!」 「「「「「「「「「「「「「「「「おーっ!」」」」」」」」」」」」」」」」 「え? 私いつの間に運命共同体? いや、確かに使い魔とメイジは一心同体の運命共同体なんだけど。 っていうか、またいつの間にか小鬼が増えてるうぅぅぅぅ!?」 その数およそ50匹。 小鬼。 百万迷宮で最も数が多く種類も豊富ながら、その生態は詳細不明。 繁殖方法などにも謎が多く、たまに土の中から生まれてきたり、 モンスターの死体やキノコ畑などから生えてきたりもする。 普通に子作りや子育てをしている場合もあるらしいが、 百万迷宮に住む多くの住民にとっての認識は「気が付いたら増えている」である。 百万迷宮のコトワザにいわく「小鬼は一匹見かけたら三十匹は居ると思え」 階段で転んだだけで死ぬかわりに、どんなに食べられても殺されても絶滅しない種族なのだ。 「……うん、もういい。もう考えるのめんどい」 大喜びで小鬼から話を聞いているコルベール先生は放置して、ルイズは歩いて自室に帰る事にした。 ねがわくば、コレが夢でありますように。 そして目が覚めたら異世界の男の子とか召喚してて、1St Kissから始まる二人のヒストリーとかが開始していますように…… と、願って眠りについた翌朝。 「うわーん!「古代連合同盟」が野犬の群れに襲われて滅亡したーっ!」 「……夢じゃなかった」 しかも小鬼国家は野犬より弱いらしかった。50匹も揃ってて。 おまけの用語説明コーナー『百万迷宮の歩き方』 【迷宮キングダム(MakeYouKingdom!!)】 発売元・ホビーベースのシニカルポップダンジョンシアターRPG。 いわゆる卓ゲ。テーブルトークロールプレイングゲーム。無電源系。 「迷宮災厄」によって世界の全てが迷宮となった「百万世界」を舞台に、 プレイヤーは王国を運営する宮廷の一員となって、ワリと貧乏臭く冒険する。 最近のTRPGとしては珍しく、自キャラが死にやすいあたりがシニカルかつ命の重さが超ポップ。 富士見ドラゴンブックからリプレイも発売されている。 【小鬼(Ogrekin)】 迷宮キングダム最弱モンスターにしてマスコットモンスター。 敵がファンブル(絶対失敗。1のゾロ目)すると1匹増える。 特殊ルールを使用していると、自分がファンブルしても2匹増える。 【『小鬼小王』クロビスと従者のダッパ】 サプリメント掲載の四コマ「小鬼キングダム」シリーズの主役主従。 クロビス様はツンデレで強気ヘタレ。ダッパ君は素直クール。双方萌えキャラ。 【国名】 ホントにサイコロ振って決定。 【野犬の群れに襲われて全滅】 『群狼』相当のモンスター。 群狼のレベルは5なので、そりゃー1レベルの小鬼じゃ勝てっこ無い。 なお、このモンスターは絶対成功すると相手のHPを1D6にしてしまうと言うスキルを持っている。 たとえHPが300あっても、発動すれば一撃で一桁にされるという恐るべき能力だが、 小鬼がこれを食らうと逆にHPが増えたりする。元が1だけに。 前ページ次ページルイズ・キングダム!!
https://w.atwiki.jp/pixivrotkappchen/pages/59.html
ルイズ・ローハン 種族 アカズキン 性別 ♀ 年齢 13歳 職業 果樹園手伝い 一人称 私 二人称 君、あなた ~さん(年上) ~ちゃん、君(同年代、年下) twitter - 町外れにある果樹園の娘。葡萄の世話の手伝いや葡萄酒と葡萄ジュースの販売がルイズの主な仕事。 昼ごろはいつも町に商品を売りに来ている。(果樹園の仕事が忙しい時は来ない事もある) もちろん果樹園でも商品の販売はしているが、町外れにあるので人はあまり来ない。 気はあまり強くないが好奇心旺盛。自分の中で決めた事に対しては頑固な一面もある。 大体いつもへらへら笑っている。 元々姉が一人いたが流行り病で死去。 姉は何でもできる子で、母からも可愛がられていた。そのため姉の死後もルイズの母はその死を受け入れられずにいる。 そんな母の姿を見てきたせいもあるがルイズも姉が大好きだったので、なぜ生きているのが自分なのかと考えるようになる。 自分の平凡さへのコンプレックスと自信の無さはそのせいかもしれない。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1175.html
深夜、宝物庫の扉の前に1人の人影がありました。 巷を賑わしている盗賊、『土くれのフーケ』その人でした。 「物理攻撃が弱点ねぇ・・・冗談じゃないわ。こんなに厚かったら、私のゴーレムで殴ったところで、 どうにもならないじゃないの!」 フーケはミス・ロングビルとして、コルベールがら、さりげなく宝物庫の弱点を聞き出していました。 あらかた聞き出した夜、意気揚々と宝物庫の前まで来ましたが推定5メイルの厚さの壁の前で毒づいていました。 物理攻撃が弱点と聞いていたのですが自分のゴーレムの力では短時間でヒビすらつけられそうにありません。 フーケは頭を抱えていましたが、 あることを思い出してニヤリと笑いました。 「ミス・ヴァリエールの使い魔、あの力を利用できれば・・・」 『土くれのフーケ』はおし殺した様な笑い声を出しながらその場を後にしました。 おとーさんが召喚されてから一ヶ月位たちました。 ルイズ自身気がついてないようですが、大分穏やかになっていました。その理由として、まず生徒達からゼロと言われることが減ったというのもあります。 先日のギーシュとの決闘でおとーさんが凄まじく強いことを生徒達も知っていたからでした。 しかし、おとーさんはその後ギーシュ発の噂のおかげで特に女子(貴族・平民拘らず)から人気でしたし元々あまり喋りませんが面白い行動をしますので恐れられる事はありませんでした。 また、生徒達は知りませんが使い魔なのに娘と思って接しているおとーさんにルイズも心を許し我侭も影を潜め素直になっていました。魔法が使えないのは相変わらずでしたが・・・ 「あらルイズ。今日も仲良いのねぇ」 手を繋いで歩いているルイズとおとーさんにキュルケが声をかけます。 「そう?使い魔と仲良くするのって良い事じゃない?」 ルイズは怒るでもなく恥ずかしがるわけでもなくごくごく普通に答えていました。肩透かしを喰った形のキュルケでしたがその後のルイズの言葉に戸惑いました。 「キュルケの方こそ最近フレイムと一緒の所見ないけど仲良くしてるの?」 「う、うちは放任主義だからいいのよ」 「たまには可愛がらないとすねちゃうわよ~」 ルイズはそう言うとおとーさんとどこかへ行ってしまいました。 (あの娘、前は自分の事で精一杯見たいに力んでたのに・・・周りが見えるようになってるじゃない。あの使い魔を召喚出来たのはルイズにとって良かったみたいね) キュルケはそんな事を考えながらフレイムを探しにいくのでした。 虚無の曜日恒例となったシエスタとコック長のマルトーの『特製デザート』に舌鼓を打ったルイズとおとーさんは腹ごなしに散歩で学院内を歩いていました。 それは、調度宝物庫がある塔の前でおこりました。突然地面が盛り上がると巨大な土のゴーレムになりました。土のゴーレムはルイズ達を見つけると腕を振り上げ攻撃してきました。 「きゃぁぁぁ」 突然の出来事に吃驚して悲鳴を上げるルイズを抱き寄せたおとーさんはそのまま横へと飛ぶのでした。土のゴーレムの攻撃をかわしつつ遠い間合いを取る位置まで来たルイズはおとーさんに下ろしてもらい杖を抜くのでした。 「間違いなく、世間を騒がせてる『土くれのフーケ』だわ」 土のゴーレムの肩に立っている人影を見ながらルイズはそう言いました。 「おとーさんお願い!!私が魔法で援護するから!!!」 ルイズの言葉におとーさんが頷いた時、左手のルーンが輝き始めました。あの時の鎧が出現しおとーさんの身体を包み込みます。 【重装陸戦おとーさんα】 おとーさんは自分よりも大きな土のゴーレムを殴りつけ脇の部分を破壊します。しかし、破壊したそばからすぐに再生されていきます。土のゴーレムもおとーさんを殴りますが多少後ろに下がるのみで傷などはついてないようでした。 一進一退の攻防の中でフーケは舌打ちをしていました。おとーさんに壁を殴らせ壊させようと考えていたのですが思っていたよりもおとーさんが小さく目標の壁に届かないことでした。 その時ルイズは詠唱を終え土のゴーレムに当てるために狙いを定めていました。 間違えておとーさんに当てないためでしたが、運良くおとーさんが土のゴーレムから攻撃を受け後ろに下がり離れました。 「ファイアーボール!!」 ルイズ渾身の魔法は失敗し爆発しました。しかも運が悪いことに土のゴーレムではなく後ろの壁が爆発してヒビが入っています。フーケがそれを見てニヤリと笑いました。 (予定とは違うけど結果オーライってやつかねぇ) フーケは土のゴーレムにヒビが入った箇所を殴らせて壁に穴を開けると素早く中に入りました。ルイズとおとーさんが呆然としていると中からフーケが箱を持って出てきました。 「ありがとよ、お嬢ちゃん。お礼に土くれをくれてやるわ」 そう言うと土のゴーレムをルイズに向けて倒れさせました。咄嗟におとーさんがルイズと土のゴーレムに割って入り、ルイズは目を瞑りました。 ルイズが目を開けると空中にいました。タバサのシルフィードに掴まれて助けられていたのでした。 「ルイズ面白そうな事してるじゃない」 キュルケが上から声をかけます。 「キュルケ!!どうして??」 「あんなに大きな音してたら誰だって気がつくわよ。ね~、タバサ」 タバサは無言で頷くとシルフィードに命じてルイズを背中に移動させるとフーケを追跡し始めました。 「ちょっと、おとーさんを助けないと」 ルイズが叫びます。おとーさんは土のゴーレムの下敷きとなり埋もれていましたがタバサが冷静にいいました。 「おとーさんなら大丈夫」 キュルケも続けます。 「あなたの使い魔があれしきの事でくたばったりしないわ!それよりあんな目にあわせた盗賊を捕まえないとね」 ルイズが心配そうに振り返る中、三人は空から追跡するのでした・・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2229.html
前ページ次ページルイズ・キングダム!! 「えぐえぐ……昨日はヒドイ目にあったよぅ……」 ――こわかったですね、野犬―― 「20人は美味しく食べられたかのぅ」 「…………」 いつの間にかルイズの部屋に集合している小鬼4匹+α。 朝起きてノックの音に扉を開けたら、滅亡した小鬼王国宮廷のメンバーが勢ぞろいしていたのだ。 <ルイズ・キングダム!!> 「と、言う訳で新王国「古代連合小鬼同盟」を建国するぞー!」 ――こんどはながつづきするといいですね―― 「さっきまで泣いてたクセに急に元気に。って言うか節操無いわねぇ」 ――まぁまぁ。げんざいの宮廷メンバーをチェックしますか?―― 「あー、うん。まぁ一応お願いするわ」 万が一にも自分がメンバーから外れている事を始祖ブリミルに祈りながら答えるルイズ。 彼女の前に「王国運営シート」と書かれた紙が差し出される。 なんでも自動的に国家の状況が映し出されると言う、一王国に一枚必帯のマジックアイテムだそうだ。 「国名『古代連合小鬼同盟』 人口/38人(宮廷除く) 国王/貴族「小鬼小王」クロビス 神官/料理人「ゼロの」ルイズ 神官/怠け者「話の長い」バゼバゼ 大臣/魔導師「炎蛇の」コルベール ニンジャ/迷宮職人「雲散霧消の」ムーク 従者/働き者・衛視「忠実な僕」ダッパの以上6名…… ……えーっと、まず最初に聞きたいんだけど、何で私が『料理人』なワケ?」 「サイコロのおぼしめしだな。『世界の法』によって決定されたのだ」 「次。何でコルベール先生が大臣になってるのよ?」 「本人が希望したからだな」 「自重しろコッパゲ。 それになんで先生だけ職業が魔導師とかカッコ良さげなのよ。サイコロ運良すぎ自重。 ついでにアンタも野犬に負けたのか魔法学院現役教師」 あまりの事態にヤサグレて言葉が汚くなっている。 ベッドの上に突っ伏したルイズは、このまま泣きたい気分だった。 って言うか少し泣いた。 ――いえ、野犬におそわれたときに、コルベールさんとルイズさんがいればよかったんですけどね―― 「そうだなぁ。あとやっぱり宮廷としては前線で戦える騎士が欲しいな。 神官は二人居るから、ルイズが騎士になるのはどうだ?」 「お・こ・と・わ・り・よっ! って言うか、なんでそんなに馴染んでるのよ! あと変えるんなら職業の『料理人』の方を変えなさい!」 ――どこでもいきられるカンキョウテキオウリョクが小鬼のウリですから―― 「官職は本人の意思で決定できるが、職業は転職所を建てないと変えられないから無理だぞ」 「あっそう。まぁどーでも良いわよ。転職したから魔法が使えるってワケでも無いし」 「使えるぞ?」 ――つかえますよね?―― 「へっ?」 「職業と官職に応じた技能は自動的に与えられるのが『世界の法』だからな。 宮廷に神官として所属している以上、神官と料理人の能力は使えるぞ」 ――ごじぶんのスキルをかくにんしますか?―― 「するする! 早く確認させなさいよ!」 ガバチョと起き上がって、ダッパ君の手から先程のマジックアイテムをひったくった。 ルイズは使い魔との契約のおかげかキチンと読める異国の文字を舐めるように見て、望む記述を見つけ出す。 「えーっと、ここね。「ゼロの」ルイズ・神官/料理人、レベル0……ってなんか腹が立つわね。 官職スキルの「祈り」は対象の負傷を回復する。 職業スキル「迷宮全席」が、お弁当やフルコースを食べた対象の攻撃能力を上昇させる。 レベルアップと共に覚えるアドバンスド・スキルはまだ無し…… コレって、ひょっとして回復の魔術が使えるって事!?」 「ひょっとしても何も、そうに決まっているだろ」 ――ためしてみます? ちょうど昨日イヌにかまれたキズがありますし―― ダッパ君が腕に付いた噛み跡を出してくる。 とうぜん、ルイズがやらない理由は何処にも無い。 「やるわ! ええっと、祈れば良いのよね。 始祖ブリミルよ、この者の傷を癒したまえむにゃむにゃ……」 お祈りをするとルイズの手から淡い光が生まれて―――ダッパ君の腕が爆発した。 「やっぱり使えないじゃない! って言うかダッパ君が死んじゃう!」 「治ったな」 ――なおりましたね―― 「へ?……あ、ホントだ。犬の歯型が消えてる。すごーい! やったわ! これでもうゼロのルイズなんて誰にも呼ばせないわ!!」 ぐっとガッツポーズで喜びに浸るルイズ。 魔法の現われ方が爆発と言うのは気になったが、今はそれも許せるぐらい気分が良い。 だが、事はそれだけでは終わらないと気が付く。 「ひょっとして……」という可能性、あるいは希望と呼ぶべきものがルイズの中に生まれていた。 「ねえクロビス、レベルアップって言うのをしたら、他の魔法も使えるようになるの?」 「んー、職業が『料理人』のままじゃダメだな。 『魔導師』や『迷宮職人』みたいに、魔法を使えるスキルカテゴリーの職業にならないと」 「このオババのように『怠けもの』でも魔法は使えるのぅ」 「じゃあ転職よ! とりあえず怠けもの以外で、その魔法が使える職業ってヤツに! 今すぐ!」 「だから、転職するには『転職所』を王国に建設しないと」 「じゃあすぐに建てなさい!」 「そんな事を言われても国家予算が無いから無理だ。5メガゴールド、持ってるのか?」 ――こっちのおかねだと、1MGが100エキューぐらいですね―― 「ぐっ……500エキューなんて大金は持ってないわね」 500エキューと言えば、平民の家が建ってお釣りも貰えるぐらいの金額だ。 と言うか『転職所』と言うからには、ちょっとした建物を建てるだろうから当然かもしれないと納得する。 「はぁ、仕方ないわね。お金をなんとかするのはすぐには無理だし、とりあえず着替えて食堂に行こうっと」 ――はいはい、じゃあ、したくしましょうね―― テキパキとブラウスやスカートを出してきて、服を着替えさせてくれるダッパ君。 ブラシで寝癖を調えて、脱いだ服を畳んで洗濯カゴに入れてマントを羽織らせる所まで手際良く済ませる。 (うーん、流石は『従者』で『働き者』ね。けっこう使える使い魔かもしれない。 いやまぁ、私の使い魔はクロビスの方なんだけど……吹けば飛ぶような王国とは言え、 仮にも国王を名乗るクロビスを命令に従わせるのは難しいような気がするのよね) そんな事を考えながら4匹(と、オババの輿係り)を従えて部屋を出ると、向かいの部屋からキュルケが出てきた所にばったり遭遇する。 ヴァリエールのライバルであるツェルプストーの女メイジは、なぜか腕に小鬼を1匹抱えていた。 「ねえルイズ。アンタ随分と可愛い生き物を召喚したのねぇ」 確かに、人間を三頭身にして犬っぽい要素を加えてツノをつけたような生き物である小鬼は、ヌイグルミっぽくて可愛いと言えば可愛い。 ちなみにツノが無いのも居れば、一本ツノも二本ツノも居る。 色も案外豊富で、基本は茶色っぽいけど、赤っぽいのからトラジマやブチ、果てはピンクや星柄に緑や紫なんてのまで居たり。 ――ハデなガラだとみつかりやすいんで、よくたべられるんですけどね―― 小鬼の人生はけっこう大変だ。 宮廷メンバーだとクロビスとダッパ君は茶色系で、ムークが黒。オババは灰色の長毛種。 キュルケが抱いてる子はピンクの短毛でショッキング・ピンクのハート模様が背中に付いてるというハデな小鬼だった。 (この女、前から思ってたけど派手好きよね)とか失礼な事を考えるルイズ。 「いっぱい居るみたいだし、この子1匹ちょうだいよ」 (派手好きの上に図々しい)と、思わずジト目でキュルケを見る。 が、その言葉を聞いた瞬間にルイズはあるアイデアを思いついた。 「一ヶ月レンタル、1匹でエキュー金貨1枚よ」 「なぁに、ヴァリエールは随分と守銭奴なのね? それとも貧乏なの?」 (ふん、なんとでも言うがいいわ。 私にはお金が必要なの。転職所を建造して魔導師になるためにね。 そのためなら、守銭奴にでもナニワ金融道にでもなってみせる!) 熱い決意を今ここに宣言するラ・ヴァリエールの淑女。 それを言葉にしない程度の分別は、まだ残っているようだった。 「まぁいいわ、じゃあコレで一年分ね」 チャリーンと投げ渡される金貨12枚。流石ツェルプストーは金持だ。 ゾンザイな態度にちょっとカチンとくるルイズだったが気にしないと決めた。 絶対に5メガゴールド溜めてみせる。 そして必ず、料理人などという屈辱的なクラスをやめて、魔法が使える職業に転職するのだ。 「あ、でも勝手に国民レンタルして、クロビス怒ってない?」 ――へいきですよ。小鬼払いはキホンですから―― 「うむ。相場は20匹売って1MGぐらいかな?」 「ふーん。だったら売るのと比べたらレンタルぐらいカワイイものよね」 いやしかし、それで良いのか小鬼。 一抹の不安と物悲しさがルイズの心中に隙間風のように駆け抜ける。 ――よっぽどカコクな労働させるか、ケガさせないかぎりはマジメに働きます―― 「怪我したら逃げて帰るけどな。まぁ大抵その前に死ぬけど」 (健気な種族だなぁ小鬼。ホロリ) ちょっぴり感涙しつつ廊下の窓から外を見るルイズ。 学院の中庭では、そんな健気な小鬼達による炊き出しの風景が 「―――って、ナニやってんのよアンタ達っ!」 「外は野犬が居て怖いし危ないから、この中で王国を建国したのだ」 「胸張って言う事じゃないわよクロビス。 うわぁ! よく見たらあのボロっちい小屋こと王宮が移築されてるし!」 ――じゃあゴハンたべてきますね―― ルイズの驚きと苦悩などそっちのけで、のんきに中庭へと向かう4匹。 自給自足の心構えは立派だけど、学院を勝手に王国領土にしないでもらいたいと心から思った。 思ったのだが。 「……まぁいいや。どうせすぐに滅亡するし。黙ってればバレないと思うし。 あの子達とこの先も付き合っていくんなら、細かい事を気にしてたら神経がもたないもの」 わずか二日目でそう悟ったルイズ・フランソワーズなのでした。 でした、が。 「うわあぁぁん! ルイズ、「古代連合小鬼同盟」が滅亡したぞー!!」 「なんでよ! いくらなんでも早すぎよ! 今さっき別れて、朝食のサラダ食べたばっかりだったのよ? 私まだメインデッシュに手もつけてないのよ?」 「それが、他の生徒の使い魔のメインデッシュに国民が食べられてなー」 ――ヘビとかスキュラとかにパクパクいかれましたね―― 「……ひょっとして美味しいワケ? 小鬼って?」 ――おいしいらしいですよ。ふほんいながら―― 「あと、他の生徒の所へレンタルに出した分が減ってたのが厳しかったかな」 「レンタルしてたの!? 何匹よ?」 ――あっちこっちで20にん、ぐらいですね―― 「……まぁ滅亡しちゃったモノは仕方ないわ。どうせまた直ぐに建国するんでしょ? だったら今のうちに国民が食べられない方法を考えましょう。大臣のコルベール先生にも相談して」 クヨクヨしてても始まらない。 転職所を建てるまではくじける訳にはいかないのだ。全ては魔導師になるために。 ズッポリ底無しの泥沼に浸かっているような気もするけど、とにかく頑張る健気なルイズであった。 おまけの用語解説コーナー『百万迷宮の歩き方』 【宮廷】 王国の中枢メンバー。いわゆる冒険者パーティー。 王国を建国して領土を広げる事から「ランドメーカー」とも言う。 国王・騎士・大臣・神官・ニンジャ・従者からなり、国王1名は絶対に必須。 本文中にあるように、攻撃力を担当する騎士が居ない小鬼宮廷は攻めの爆発力に欠ける。 【ルイズの職業が料理人】 サイコロ振って決定。コッパゲ先生が魔導師なのも、サイコロ運の賜物。 【国民の切り売り】 迷宮キングダムにおける『国民』は、ヒットポイントなどと同じ消費型リソース。 敵の攻撃を防御するのに消費されたり、攻撃力を増加させるのに消費されたり、 デフォルトでアイテム手に入れるために生贄に捧げられたりする。 百万迷宮では正に人情紙風船。 現代日本を舞台にした冒険が出来る追加データ集「ハレ時々迷宮」では、 迷宮事件に挑む迷宮探偵達のために「小鬼レンタルサービス」が行われていた。 何処に行っても小鬼の扱いなんてそんなモンである。 前ページ次ページルイズ・キングダム!!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7491.html
元ネタは『サガ2秘宝伝説GOD』からエスパーガール ルイズと彼女と運命の糸 前編 ルイズと彼女と運命の糸 後編
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/921.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (3)水のルビー 慌てたコルベールが教室に入ると、中では異常な光景が広がっていた。 焦げたミスタ・ギトーを、「治癒」の魔法が使える生徒達が囲んで治療しているのであった。 「ななな、何があったのですかな!?」 「えー、…気にしないで下さい、ミスタ・コルベール。 それよりも……その格好はどうなされたのですか?」 応えるルイズ、しかし、その顔は困惑気味。 無理も無い。 彼は頭に大きなカツラを被り、ローブの胸にはレースの飾り、その他全てが普段と同じ格好ではない。 そんな珍妙な格好のコルベールを見た生徒は、皆一様に同じ顔つきをしているのだった。 「そうでした!皆さん、本日の授業は全て中止でありますぞ!」 そのコルベールの一言に教室は歓声に包まれる。 「皆さん!お静かに、お静かに!お知らせです、お知らせですぞ!」 手を必死にばたつかせて、歓声に負けじと声を上げるコルベール。 「アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問のお帰りに、このトリステイン魔法学院に行幸なされます!」 トリステイン魔法学院正面門。 そこで、左右に整列した生徒達が高貴なる馬車の到着を待っていた。 やがて、馬車が到着すると一斉に杖を掲げる、例外の無い忠誠の証。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなぁぁぁぁぁぁりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」 まず最初にマザリーニ枢機卿、そして、枢機卿に手をとられて美しい―まだ少女と呼んでも構わない年頃の―娘が馬車の中から現れた。 一斉に、湧き上がる、生徒達の歓声。 アンリエッタは生徒達の歓声に応えるように微笑むと、優雅に手を振った。 王女に微笑みかけられて、更に涌く生徒達。 ルイズは正面を向き、真面目な顔をして王女を見ている。 アンリエッタ王女、幼少のみぎり、ルイズと親しかった少女。 時間と距離が二人を引き離したが、ルイズはアンリエッタを忘れたことは無かった。 (王女様……ご立派に、ご立派になられて…) 遠い昔の話、既に王女は忘れているかもしれない。 それでも構わないと、ルイズは思う。 遠くから、遠くから王女の姿を見ているだけで、満足だと。 そして、熱心に王女を見ていたルイズであったが、視線を外したふとしたときに見事なグリフォンに跨った貴族の姿が眼に止まった。 気付く、そう…その姿は、あまりにも、あの頃の面影を残していて…ルイズは胸が切なくなるのを感じて、瞳を閉じた。 そして、その日の夜。 ウルザはいつものように机に向かい、何かを作っている。 一方、部屋の主であるルイズは、ベットに腰掛け、ほぅと息を吐いた。 「………これで十三回目だ、ミス・ルイズ。何か心配事かね」 「え、あ、ううん、そんなことじゃなくて………」 振り返らないウルザ。 背を向けたままのウルザとの会話は、既に普段の日常と化している。 「なんでもないの、…なんでも…」 無言、カチャカチャと机からウルザが何かを組み立てている音。 そんな中、扉をコンコンとノックする音が部屋に響いた。 初めに長く二回、そして短く三回。 ルイズがはっとする、記憶の中の大切な思い出。 慌てて立ち上がると、ドアを開いた。 そこに立っていたのは、黒いずきんを被った小柄な人影。 ルイズはすぐさま部屋に招き入れると、後ろ手に扉を閉めた。 「あなたはっ!」 ルイズが驚きに大きな声をあげそうになると、人影は人差し指を唇に当てる。 そのまま、懐から杖を取り出すと、何事かを呟き魔法を使う。 「ディテクトマジック?」 探知の呪文。 「どこに、眼が光っているか分かりませんからね」 人影が、頭巾を取る。 現れる、忠誠を誓うべき王族、懐かしい思い出の人、アンリエッタ。 「姫殿下!?」 「ルイズ!ルイズ!ああ、懐かしいルイズ!」 感極まったように、膝をついたルイズを抱きしめるアンリエッタ。 「ああ!姫様、このような下賤の場所へ、いらっしゃるなんて…」 「ルイズ・フランソワーズ!そんな堅苦しい他人行儀はやめて頂戴! わたくしとあなたはおともだち、おともだちではないですか!」 「勿体ないお言葉…」 「やめて、やめて頂戴、ルイズ。ここには枢機卿も母上も、欲の皮のはった宮廷貴族もいないのです 私とあなたは、幼い頃に、一緒に宮廷の中庭で蝶を追いかけて遊んだ仲ではないですか」 「ええ……お召し物を泥で汚して、侍従様に叱られてしまいました」 「そう!そうよ!ルイズ。クリーム菓子を取り合って、つかみ合いの喧嘩になったこともあったわね!」 「ええ、あれは………」 少女達が抱き合い、思い出話に花を咲かせている間も、部屋の隅では黙々と作業をする男の背。 「ねぇ、ルイズ……ところで、そこの方を、紹介して頂けないかしら」 「はい?あ!ミスタ・ウルザ!」 「………何かね?ミス・ルイズ」 こほんと咳払い一つ、なけなしの威厳を振り絞る。 「挨拶を、挨拶をして頂戴、アンリエッタ姫殿下に」 そこで、始めてウルザが椅子を立ち上がり、ルイズ達に向かい合う。 そしてその場で深々と礼を取る。 「お初にお眼にかかります、アンリエッタ姫殿下。ウルザと申します」 「え?ウルザ、さん?え?え?」 きょろきょろと、ルイズとウルザ、二人の間を交互に移動させるアンリエッタ。 「…もう、言って下さればいいのに、ルイズ。 それにしてもこのようにお歳が離れた方となんて………ああ、そういえばわたくしも変わりませんね。お忘れください。」 「ひ、姫殿下?あの、何か勘違いを…」 「いえ、いいのですルイズ。このように遅い時間、貴族の部屋に二人の男女。わたくしも分かっております」 「姫さま!?違います!違います!ミスタ・ウルザは私の使い魔です!」 「使い魔…?メイジにしか見えませんが」 「…メイジです、姫さま」 その後、ウルザの口も借りて、何とか誤解を解くことが出来たルイズであった。 「本当に、昔からあなたは人とは違った子でしたが…相変わらずですね」 「今からお話しすることは、誰にも口外してはなりません」 アンリエッタがそう切り出すと、ウルザが席を立とうとする。 「あ、いえ、メイジに取って使い魔は一心同体。席を外す必要はありません」 そして、もの悲しい調子で、アンリエッタは語り始めた。 自身がゲルマニア皇帝と結婚すること、それが望まぬ結婚であること、しかしそれが不可欠である政治情勢。 ゲルマニアに一人娘を嫁がせることで、同盟を結び、来るアルビオンとの戦いに備えるトリステイン。 トリステインとゲルマニアとの同盟締結を防ごうとするアルビオン貴族達の暗躍。 そして、それを可能とさせる、一通の手紙の存在。 手紙はアルビオン、抵抗を続ける最後の王族、ウェールズの手に。 「分かりました…このルイズ、ルイズ・フランソワーズが必ずや手紙を取り戻してまいります!」 「ああ、ルイズ、私のルイズ!この様に危険なことに巻き込んでしまう私を許してください」 「いいえ、姫さま、気になさらないで下さい。 ………ミスタ・ウルザ…?」 勝手に危険、しかも内乱の最中であるアルビオン王国、その中に潜入しようという話を進めていることに気付き、ルイズはウルザの顔を窺う。 「私は使い魔、君が決めたことに従うだけだ。君が友達の窮地を救いたいというなら、力を貸そう」 拍子抜けするような了解、むしろ、多少の気遣いが感じられるような……… 「それよりも、彼をどうするか、考えた方がいいのではないかね?」 ウルザはそう言うと、部屋の扉を開け放つ。 すると、バランスを崩して雪崩れこむように部屋に転がり込んでくるギーシュ・ド・グラモン。 「………やあ」 結局、覗いていたギーシュが一緒についていくと言い出し、秘密を知られてしまった以上同行させる他ないというアンリエッタの配慮で、ギーシュも同行することとなった。 話が纏まると、アンリエッタは一通の手紙をしたためた。 そして、その封をする直前、思いつめたように一文を書き加える。 「始祖ブリミルよ……。国を憂いても、この一文を書かざるをえない、この自分勝手なわたくしをお許しください」 改めて、手紙に封をし、それをルイズに手渡すアンリエッタ。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに……件の手紙を返してくださるでしょう」 それから、とアンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜くと、それをルイズに差し出した。 「母上から頂いた『水のルビー』。きっとこれがあなた達をお守りくださるでしょう。 どうか、あなたたちに始祖ブリミルのご加護がありますように………」 誰が気付いたであろうか。 この時、『水のルビー』を見つめるウルザの瞳が、驚愕に見開かれていたことを。 出来ないじゃないの、やるのよ。 ―――虚無魔道師の見習い ルイズ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/269.html
ここは、トリステイン魔法学院の第一演習場。穏やかかな春の気候ででしたが、そろそろ夕暮れに差し掛かり少々肌寒くなってきました。 生徒たちは、羽織っていたマントを体に巻きつける様にしながら無言で待っていたのでした。 話は少しさかのぼるりますが、今日の午後から二年に進級した生徒たちによる「サモン・サーヴァント」が行われていました。 今後の魔法使いとしての一生を決めるといっても過言ではない重要な儀式なのでした。 生徒たちの殆どが成功を収め「コントラクト・サーヴァント」 も済ませることが出来ていました。一人の例外を除いて・・・・ 一人の例外とは桃色の髪をした少女の事でしたが、この少女」同じ事を何十回となく繰り返しているのです。 詠唱→爆発→失敗→詠唱→爆発→失敗→詠唱→爆発→失敗→詠唱→爆発→失敗・・・・ 「目の前繰り広げられるある少女の行動にそろそろ飽きてきていた。」 これは、一人の例外を除いた生徒・教師全員の心理とも言うべきものでした。最初の頃は嘲笑や冷やかし等を送っていましたが回を重ねるごとに流石に黙ってしまったのでした 頭が涼しげな中年の教師らしき男性が少女に声をかけます 「ミス・ヴァリエール、そろそろ日も暮れてきました。サモン・サーヴァントは明日やり直す事として、今日の所は魔法学 院に戻りましょう」 「コルベール先生、後一回だけ・・・どうか後一回だけ挑戦させてください」 顔も服装も泥や煤だらけとなった少女は、やや涙目になりながら嘆願したのでした。 教師らしき男性は少し考えた後 「わかりました。ミス・ヴァリエール、落ち着いてからゆっくり集中してやってみなさい」 ルイズは教師に礼を述べるとゆっくり深呼吸し今までで一番の集中を始めるのでした 「諦めの悪さは私でも負けるかもね~」 褐色で豊満な胸を持ち赤毛の生徒が、先ほど自ら召喚したらしいサラマンダーを撫でながら呟いた 「タバサはどう思う?」 「興味ない」 自分の背丈より長い杖を持つ幼く青い髪の少女はそっけなく答えるのでした 「全宇宙のどこかにいる私の僕となる者よ! 比類なき力を持つ使い魔よ! わたしは心より求め、訴える!! 我が導きに答えよ!!」 力が入ったためか少々変わった詠唱の後、轟音とともに盛大に広がる爆発。先ほどと殆ど同じ光景、違うのはその爆発の大きさと幽かに見える何かの影・・・・ 「おい、何か居るぞ」 「ゼロのルイズが召喚に成功したのか!?」 「そんなまさか・・・・信じられん・・・」 遠巻きに見守る生徒達の声など耳に入らない少女は(やったわ! あたしはやったのよ!! ついに召喚に成功し たんだわ!!!) 徐々に煙が晴れてはっきりとその姿が見えてきます。そこには奇妙なゴーレムと思しき白い何かが存在していました。 コルベールが唸りながら呟きます 「ゴーレムの様ですが・・・浮いている上に・・・持っているあれはほうき???」 確かに、白いゴーレムらしき者は宙に浮いていました。それだけでも珍しいのだがなぜかほうきの様な物を持っていた。さながら掃除をしているかの様なその姿。 「掃除するゴーレムを召喚するなんて珍しいや」 「流石はゼロのルイズ!!一味違うぜ」 召喚したものを見ながら、嘲笑する生徒たち。しかし、ルイズの耳には届かないのでした。 (宙に浮いてるゴーレムなんて結構レアかも。ほうきなんてこの際どうでも良いわ!はやくコントラクト・サーヴァントを済ませて使い魔にしなきゃ) ルイズはサモン・サーヴァントが成功したこと。宙に浮くゴーレムを召喚できたことの喜びでいっぱいだった。大急ぎでゴーレムまで駆けつけると更に驚くべき出来事が待っていました。 「わたくし、庭を掃いていました。しかし、どこまで庭かわかりません。わたくし・・・」 「あんた喋れるの???」 白いゴーレムの呟きを聞いたルイズは驚いて声をかけました (よくわからない事言ってるけど言葉も喋れるゴーレム・・・かなりいいわ!!) さらに喜びを増したルイズはささやかな胸を張り貴族の威厳をかもし出しながら質問をするのでした 「あんた誰?名前は?」 「おとーさんです」 「へ?」 さらに、白いゴーレムはこう続けたのでした 「クイズ。私は誰でしょう?」 「へ?」 「ヒント。サンタさんではありません」 ルイズは少し考えた後、 「お、おとーさん?」 「当たり」 白いゴーレムはどこから出したのか右手でベルをカランカランと嬉しそうに鳴らしていました。 ルイズは白いゴーレムの左手からほうきを奪い取ると 「あああ、あんた!!あ、あたしの事バカにしてるでしょ~~~~!!!」 と顔を真っ赤にしながら叫び白いゴーレムをペシペシ叩きながら追い回すのでした・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4467.html
「天体戦士サンレッド」から「怪人組織フロシャイム」と「正義の味方のサンレッド」を召喚 秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ-01 秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ-02 秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ 外伝?
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1691.html
前ページ次ページ仕切るの?ルイズさん 春――ここに悩める女生徒が一人 「うーん………」 「どうしたの? そんな顔をして。」 「あ、おはようキュルケ。 いや、昨日私が召喚した使い魔の事なんだけどね………」 「ああ、あの四角い形をした使い魔ね。 ……ひょっとして何かすごい能力とか見つけたとか?」 「いや、あの憎き使い魔をどう煮ようか、どう焼こうか、どう蒸そうか………って考えてたらいつの間にか朝になっちゃって………」 「………それは大変だったわね。」 時はサモン・サーヴァントの儀式の翌日。 つまりキュルケが昨日召喚したばかりの使い魔を連れて朝食に向かう途中でクラスメートのルイズに遭遇したのである。 「ところでさ」 キュルケが突然ルイズに話題を振る。 「あなた……何か忘れ物とかしてないかしら?」 「えっ?いきなり何言い出すのよ。 私が忘れ物なんてするわけないじゃない。」 「つまり、その………」 「なっ、何よ。そりゃいつもよりぼーっとしてるかもしれないけど、私は忘れ物なんかしてないわよ! 本当よ!」 珍しくキュルケが言葉に躊躇していたのでルイズはいささか動揺していた。が――― 「じゃああなたのその格好はファッションなのよね?」 なぜか室内に冷たい風が吹いた。いつもより下がスースーした。 (あああああああーーーーーー!!!!!私、スカート履いて無い! どうりで下がスースーすると思ってたら!) 「××××恥ずかしぃーーーー!!!!」 「ルイズ………あなたが何を言っているのかあたしにはわからないわ………」 「……………」 「あっ、タバサ。おはよう。」 キュルケの挨拶を軽くスルーしたタバサは、 目の前のルイズの姿を見て一言。 「若手芸人?」 「ウケ狙いでも、罰ゲームでもないわよっ!」 むしろその方がまだマシなんじゃ………と思ったが口には出さないキュルケであった。 「あんた誰?」 「おう!俺の名前はモロヤマ1号だ! 文部科学省が生み出したラララ科学の子なのさ! もっと俺の事について知りたかったら『10万個』と10k 「ミスタ・コルベール! 今すぐこれを私の魔法で破壊します!」 「おいおい、いきなりこれ扱いなんて酷いぜセニョリータ。 これから俺はお前の使い魔になって生着替え見てはぁはぁしてやるからさ。」 「誰があんたを使い魔にするって言ったのよ!」 時は遡って1日前の春の使い魔召喚の儀式の時である。 他の2年生は難無く使い魔を召喚し、ルイズも失敗はしたが召喚に成功した。 それが、顔がパソコンのモニターの形をしていて耳には高性能っぽい何かが備え付けられていて首から下は学ラン姿のロボット、モロヤマ1号だった。 「ミス・ヴァリエール。これは伝統なんだ。 たとえ何かの臓器であっても黒タイツを履いた私そっくりのおっさんであったとしても契約が成立する。もちろん、これも例外ではない。」 「お前もこれ扱いかっ!」 かくしてルイズはモロヤマとコントラクト・サーヴァントの儀式を行った。 「なんでそこまでして俺との契約を嫌がったんだ?」 「だって………」 ルイズは頬を赤く染めてぽつりと本音を漏らした。 「契約したらあんたの馬鹿がうつりそうで………」 「うわっ、なんて失礼な。」 そして呆然としていた生徒達に向かってモロヤマはこう言った。 「お前達! 俺が超美少女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとチューしたこの唇と間接チッスする権利を買うとしたらいくら出す?」 「いっ、いきなり何言い出すのよあんたは!」 「全くだ。僕たちを馬鹿にするのにもほどがある。」 そう突っ掛かってきた男子生徒の名前はギーシュだった。 「そうよ! いくら男子生徒が馬鹿だからって得体の知らない何かとキスするわけないじゃない!」 「そうだよ! 間接キスと言えばラップ越しに決まってるだろうが!」 「あんた達怒るところはそこなの?」 キュルケの冷静なツッコミが飛んだ。 しかしルイズは自分の見通しの甘さに気付いていなかった。 一つは、馬鹿は自分だけでなく学院の皆にうつってしまっている事。 もう一つは馬鹿だけでなく変態にもなっている事―― 前ページ次ページ仕切るの?ルイズさん